●発達障害の診断が、先延ばしになる理由
「発達障害は、生まれつきの脳の障害」と言われていますが、詳しい研究が進んでいないので、脳の検査では診断はできません。現時点では、「発達障害に特有の行動が見られるかどうか?」という、行動観察による診断が一般的です。それには「DSM-5」「ICD-10」といった診断マニュアルを用いるのですが、項目の中には、「落ち着きがない」など、小さい子どもにはありがちな行動も含まれています。
なので正確に判断するためには、それらの行動が「ふつうの程度を越えているか」「年齢が上がっても継続しているか」を見極める必要があるため、診断は3歳以降になることが多いのです。
●気になる行動の原因は、「アタッチメントのゆれ」かもしれない
目が合わない・落ち着きがない・かんしゃくがひどい・こだわりが強い・人に手が出る・自傷行為がある…などは、発達障害に特有の行動と思われています。しかし、そのほとんどは、「アタッチメントのゆれ」があるお子さんによく見られる行動でもあります。実際、アタッチメントが改善していくと、そういった行動がなくなるお子さんはたくさんいます。
研究者の中には、「現在、発達障害と診断されているお子さんの中には、実は発達障害ではなく、アタッチメントのゆれであるケースがかなり混じっているのではないか」と考えている人もいます。
●育てやすい発達障害児と、育てにくい発達障害児の違い
発達障害と診断された子どもの中で、育てやすいタイプのお子さんと、育てにくいタイプのお子さんがいます。その違いは、発達障害としての重度・軽度の違いよりも、アタッチメントの状態の違いによるところが大きいのです。
アタッチメントのゆれが大きいお子さんは、多動・奇声・自傷・他害・パニック・こだわりなどの行動が目立ちます。しかし、アタッチメントが改善していくと、そういった行動が少なくなり、育てやすくなるのです。
●「アタッチメント」という視点からの、早期発見・早期改善を
0~3歳の時期は、アタッチメントがしっかりと機能しているお子さんにとっては、親子関係を通して、言葉や身辺自立などが身につく「一番の成長期」です。ですから、お子さんの気になる様子が、アタッチメントのゆれと関係していたら、診断のため「3歳まで様子を見る」という方針によって、大事な成長期をムダに過ごしてしまう可能性があります。
発達障害が心配なお子さんは、まずはアタッチメントの改善を目指して、「今日からできること」に取り組んでいただければと思います。