●「ふつうの子育てをしているにもかかわらず、アタッチメントのゆれをもつ子ども」に関する発達心理学的な研究の情報は、今のところ、私は入手していません。ですから、その原因についての研究があるのかどうかもわかりません。ただ、30年にわたり、「アタッチメントのゆれ」をもつ乳幼児の改善に取り組んできた立場から言うと、いくつかの原因が推察できます。
●まず、お子さんが生まれながらにもつ「緊張の強さ」です。「甘える」とか「泣く」といった自己表現に対する緊張が強いことが、感情抑圧傾向につながり、それがアタッチメント行動出現の歯止めになっている様子が見られます。
●また、生まれながらの「敏感さ」も関係しているようです。たとえば、産後うつ状態にある親と過ごしている赤ちゃんは、表情が硬くなることがあります。それは赤ちゃんが敏感に、母親の状態を感じとっているせいだと思われます。ところが、さらに敏感な子どもは、親が抱えている「普通レベルの子育てストレス」にさえも影響を受け、感情抑圧傾向をもつようになると思われます。
●さらに、「不安の解消装置」であるアタッチメントが機能しにくいことから、他の子どもよりも、ネガティブ感情を蓄積しやすい傾向があります。その結果、引っ越し・入院・下の子の誕生・夫婦げんかなどによって、大きな影響を受けやすく、そのことでまた、感情抑圧傾向とアタッチメントのゆれが進んでしまうという悪循環が起きるようです。