「アタッチメントのゆれ」とは?

 

お子さんの「育てにくさ」に悩む多くのお父さん・お母さん。保育士さんや幼児教室の先生など、子育て支援のプロからも相談を受けます。落ち着きがない、聞き分けが悪い、少しのことでひどいかんしゃくになる、理由もなく手が出る…などなど。もちろん小さいお子さんは、まだ気分まかせの行動が多く、それらは子どもらしさの表れと言えるのかもしれません。
しかし、ここでいう「育てにくさ」は、ふつうの落ち着きのなさ・聞き分けの悪さとは違います。どんなに接し方を工夫してみても、困った行動が止まらず、親も支援者も疲れ切ってしまうほどなのです。なかには、発達障害という診断を受ける場合もありますが、そうでないお子さんのなかにも、このようなケースが増えてきています。実は、そういったお子さんのほとんどは、「アタッチメントのゆれ」という問題を抱えているのです。

「アタッチメント」(愛着)とは、「乳幼児が、安全や安心感を得るために、特定の養育者に対してつくる心理的な絆」のことで、親子関係の基礎になるものです。アタッチメント理論は、イギリスの精神分析学者のボウルビィによって提唱され、その後、発達心理学の常識になりました。アタッチメントは親子のコミュニケーションの土台なので、アタッチメント形成に問題が生じると、親子関係がぎくしゃくしてしまいます。しかし従来、アタッチメントは、食欲や睡眠欲と同じように、人間が生まれながらに持っている欲求のひとつであり、ふつうの子育ての中で、自然に形成されていくものと考えられてきました。アタッチメントにゆれが生じるのは、虐待など、親の育て方に問題がある場合に限られるとされてきたのです。
ところが最近、親の育て方には大きな問題がないのに、お子さんがもつ「心理的な傾向」によって、自然な形でのアタッチメント形成が進みにくいお子さんが増えています

ほとんどの育児書や子育て支援は、「ふつうの子育てをしてれば、アタッチメントは自然に形成されるはず」という考え方に立っています。ですから、「ふつうの子育てをしているにもかかわらず、アタッチメントのゆれをもつ子ども」の存在はほとんど知られていないので、親の悩みがなかなかわかってもらえないのです。
また、アタッチメントにゆれがあるお子さんの場合、一般的な子育ての方法が逆効果になる傾向があります。ですから、周囲の人や子育て支援者からのアドバイスが裏目に出てしまうことがあり、そのことで、さらに親は孤立してしまうのです。虐待死のニュースを見るたびに、「ひょっとしたら、アタッチメントがゆれているお子さんだったせいで、子育てが行き詰まったのでは…」と想像し、胸が痛みます。

「アタッチメントのゆれ」は、発達障害とは違います。それは、子どもが生まれながらにもっている「心理的な傾向」で、改善していくことができます
発達障害のお子さんでも、アタッチメントが安定してくると、行動が落ち着き、親子関係が楽になっていきます。発達障害のせいと思われていた「困った行動」(多動・奇声・自傷・他害・パニック・こだわりなど)が、アタッチメントの形成によって、少なくなっていくのです。

このWEBサイトでは、「アタッチメントのための親子カウンセリング」(FCA)の考え方をご紹介しています。お読みいただくことで、苦しみの中にいる多くの親子が、光を見出してくださればと願っています。

「アタッチメントのゆれ」による育てにくさとは?


「アタッチメントのゆれ」による育てにくさとは?
「ふつうの子育て」が、うまくいかない理由
「アタッチメントのゆれ」の早期発見
なにが原因なのか?
発達障害との関係
FCA(アタッチメントのための親子カウンセリング)