(2)お母さんが先にラクになっていい
「子どもを虐待してしまう・・・」と相談に来られたお母さんがいました。
ちょっとワガママを言われると、ついカッとなって叩いてしまう。泣き寝入りした子どもの顔を見ながら、自己嫌悪でいっぱい。「もう絶対に叩かない」と決意しても、またやってしまうそうです。
こんなことが続くと、子どもの方も荒れてきて、かえってワガママがひどくなり。そうなると、またお母さんがイライラ・・・という悪循環。
「ダメな母親です」と唇をかみしめるお母さんに、「ちっともダメな母親じゃないよ」と、私は声をかけました。
・・・叩かれるお子さんも苦しいけれど、出てしまう手が止められないお母さんも苦しいね。本当は優しくしてあげたいのに。大好き!って抱きしめてあげたいのに。そうできない自分がつらいねえ・・・
それを聞いて、お母さんの目から涙があふれました。そして、今までの寂しさを切々と語り始めてくれたのです。
もともとあった育児に対する不安。仕事が忙しく、いつも不機嫌なご主人。祖父母との不仲。ひとりぼっちの寂しさの中で、だんだん疲れてきてしまったのですね。
その後何回か通ってこられ、お母さんの心の疲れが癒されるにしたがって、だんだんと良い親子関係になっていきました。
お母さんの気持ちが安定していると、子供の心も安定してきます。でも、「親がストレスを溜めてしまっているから、子供に悪影響を与えている!」と責めてしまうと、よけいにお母さんは苦しくなってしまう。
そうではなくて、お母さんがまず先に、楽になっていいのです。子どもの気持ちを受けとめる前に、まずお母さんの苦しさを、周囲の人にしっかりと受けとめてもらっていいのです。
そうすれば、お母さんが本来もっている「優しさやパワー」は、自然に開花していくのですから。
→次へ