(3)言葉の発達【1~3歳】

【1才~満2才】

 この時期は成長期で、どんどん言葉(単語)が増えて、かわいい盛りの時期です。周囲の人のマネも盛んになります。ただ、「表情や態度による気持ちの表現」が順調に延びているのなら、単語数ばかりを気にする必要はありません。

・やりとり遊びを喜ぶ
 この時期は、ママとの遊びの幅が広がり、やりとり遊びを好むようになってきます。初期の頃のママとの遊びは、「子どもの一人遊びに、ママが一緒にいてあげる」といった感じが強いですが、1才の後半には「二人遊び」に発展していくはずです。
  例えば、おもちゃの電車で一人で遊んでいるような場合。たくさん並べてある電車の一台を、「ママに、これ貸してよ」と取って動かそうとすると、気前がよい性格の子は、すぐにニコニコしながら貸してくれます。ダメという感じで貸そうとしない子もいますが、「いいじゃない。貸してよ」と何度も粘ると、よほど機嫌の悪い時でない限り、譲歩して貸してくれるでしょう。ママがブロックを出してきて、「ねえ、ねえ、これで線路を作らない?」と提案すると、それはいいという感じでのってきたり。そうでなくても、「ブロックはいいけど、線路じゃなくて、駅を作る」と、態度で自己主張したり。
  こんなふうに、こちらのペースにのってきたり、自分のペースを主張しようとしたり。YESの時はニッコリ笑顔、NOの時は「イヤ!」と一言。たとえ言葉は少なくても、「主導権をとったり、とられたり」という遊び方ができるのなら、それ自体が、「気持ちのやりとり」なので、会話(言葉による気持ちのやりとり)への準備体操になっているのです。したがって、こんな「やりとり遊び」を喜ぶのなら、まずは心配ないと思います。
 ところが、「ママに、この電車貸して」と関わっていくと、いつも貸そうとしないで、ひどいかんしゃくを起こす。逆に、無抵抗に貸すけれど、自分はスッ~と別の遊びに逃げてしまう。こういった様子ばかりが続く子は気になります。どちらの場合も、気持ちのやりとりを避けてしまっているような感じがあるからです。たとえ単語数が増えてきたとしても、一方的な言葉や場に適さない言葉ばかり増えていくのだとしたら、親子関係という土台が揺れている可能性があります。

  ・公園でのやりとり遊びを好む
 この時期の子どもは、「公園自体が楽しい」というより、「ママと一緒の公園が楽しい」という傾向があります。だから、どうしてもママが付き合ってあげなければならない場面が多くなります。また、臆病な子や緊張しやすい子、自信をもちにくい子の場合、遊びが盛り上がらず、ママにしがみついて離れなかったり、「帰ろう!帰ろう!」だったり。これはこれで困ったものですが、こういったタイプの子は、「こわい気持ちを、ママに向かって表現している」という点で、親子関係はできていると言えます。
 ところが、恐がったりはしないものの、いつも一人で公園の外に逃げ出してしまう。あるいは、次々に遊び場を代え、妙に落ち着きがなく、ママは追いかけるのに必死…という場合。もともと好奇心が強く、興味関心が次々に湧いてくるという積極的なタイプの子ならあり得ることです。でも、臆病・神経質で、こだわりが強いタイプのお子さんで、こういった様子が見られる場合は、気になります。
  「興味関心が次々に湧くので、動きがすばやい」というより、「無目的にウロウロと動きまわる。しかも、人と交わることを妙に避ける」といったタイプの行動を、「多動」と呼ぶことがあります。こういう子どもは、表情は平気そうでも、心の奥ではたいてい大きな不安や緊張を抱えています。
  このような場合も、「泣いてママに訴える→あやされる→だんだんに落ち着く→笑顔が戻る」というSOSサイクル面での親子関係が進んでいくと、不安や緊張が解消され、多動傾向もだんだん減ってくるのです。

【満2才~満3才】

 「2才のお誕生日を迎える頃には、2語文(「ワンワン、キタ」「マンマ、チョウダイ」といったぐあいに、主語・述語にあたる2つの単語をつなげたような文)が言えるようになります」と育児書には書いてあります。実際、ほとんどの子どもの場合、そのような感じですが、例外もたくさんあります。
  たとえ単語だけの段階だったとしても、「表情や態度による気持ちの表現」がますます盛んで、その場に合った単語が増えているのなら、まずは大丈夫だと思います。たとえば、急に犬に吠えられて、こわい思いをした時、「コワイ!」(1単語)とママにしがみついて、助けを求めるのなら、いい感じ。
  でも、そんな時、「ムカシ~! ムカシ~ アルトコロニ~!」(長文)と一人で騒ぎ、ママが抱きしめて慰めようとすると、もがいて逃げようとする…という感じだったなら、少し心配です。長い文章をしゃべれたとしても、「表情や態度による気持ちの表現」が進まず、しかも、その場に合っていない言葉のラレツばかりだとしたら、気になります。
 お友達への関心が高まり、同じ年令の子どもと関わりをもちたがるようになるこの時期。ママ以外の人への接近は、不安が伴うもの。それだけに、ピンチの時(恐い時、イヤな時)ほど、ママにしっかり助けを求める(泣きたい気持ちを訴える)ことが、安全な自立・着実な親離れのためには、かえって必要です。
  ところが、普通なら「コワイ」と訴えたり、「イヤだ!」とダダをこねたりするような場面では、意外に平気。ところが、「こんなことぐらいで」という場面で、急に機嫌をそこねたり、かんしゃくを起こし始めたり…という感じが強くなっていくような子は、どう接すればよいのか、分からなくなってきますね。
  このようなお子さんも、ここぞというタイミングでSOSサイクルが発揮されるようになると、気持ちが安定していき、育て方もラクになってくるのです。

【満3才以降】

 ここまで、いろいろ心配はあったけれど、「表情や態度による気持ちの表現」(「プラスの気持ちの表現」と、「マイナスの気持ちの表現(SOSサイクル)」は着実に育ってきているというお子さんの多くは、3才のお誕生日を迎えるまでには、「成長の時期」が訪れるはずです。そうでなくても、「ああ、これは、本人の性格の問題なんだわ。この子はこわがりで慎重だから、いろいろな面での発達に時間がかかるのだ」と分かってきて、「それじゃあ、まあ、自信がつくように、ぼちぼち付き合っていこうか」という気持ちになれるはずです。こういうタイプのお子さんは、こわがりな自分に引け目を感じないように育っていけば、年令が進むにつれ、だんだん自信がつき、その個性が「物事をよく考えて実行する」という良い方向に発揮されるようになってくるはずです。
 しかし、「表情や態度による気持ちの表現」や、親子関係という成長の土台が育っていない子どもの場合、なかなかコミュニケーション意欲が育っていかず、一進一退のような感じになってきてしまう可能性があります。また、言葉はある程度進んだとしても、気むずかしさ・情緒の不安定さが増してきて、「いったい、この子は、何を考えているの?」と思ってしまうような付き合いにくさが、だんだん強くなってくることがあります。気になるクセや行動が出始める子もいるかもしれません。


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