(7)気になるクセ・行動

 発達障害について説明した本には、様々な「問題行動」の例があげられています。「多動」「こだわり」「目が合わない」「自傷行為」「ひどいイタズラ」「常同行動」「奇声」「パニック」などなど。これらを、「発達障害かどうかの判断基準」というふうに短絡的に理解してはいけません。というのも、こういった行動は、確かに、発達障害のお子さんに表れやすい行動ではありますが、緊張しやすい子やこわがり屋さんの子にも、一時的に表れることがあるからです。
  これらの行動は、不安や緊張を溜め込み、その上、それを無理に一人でガマンしようとしている時に表れる「まぎらわし行動」であることが多いのです。ひどいチックや、歯ぎしり、爪かみや指しゃぶりなども、似たようなメカニズムがあります。したがって、抱えている不安・緊張の解消に目を向けることなく、表に現れた行動だけを押さえ込もうとしても、なかなかうまくいきません。なくなったと思っても、別の形のクセ・行動に変わっていくだけのこともあります。ところが、不安やストレスが溜まったとき、お母さんに訴えて慰めてもらうという「マイナスの気持ちの表現(SOSサイクル)」ができてくると、こういった行動は少なくなってくるのです。
  発達障害のお子さんの場合も同様です。「こういった行動自体が、障害の表れ」とする専門家もいますが、むしろ、2次的障害(もともとの障害のせいというより、ため込んだストレスによる症状)の表れであることが多いのです。こういったお子さんの場合も、SOSサイクルがうまく育ってくると、これらの気になるクセ・行動が、徐々に減ってくることが多いのです。
  ただ、発達障害のお子さんの場合、「表情や態度による気持ちの表現」に強力なブレーキがかかっているので、無表情だったり、ニヤニヤするだけだったりということも多いのです。したがって、「こんな子に不安や緊張なんてあるわけはない」と思い込んでしまいがちです。


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