(6)認知力

 認知力とは、色・形・大小関係・数・文字などが理解できたり、使ったりできるということです。「入学へ向けて」というよりも、「こういった知識が増えると、日常生活が広がり、便利になる」という意味で大切です。年齢が上がるにつれて、少しずつ身につけてもらいたい能力です。
   認知力の面でも、「表情や態度による気持ちの表現」(「プラスの気持ちの表現」と「マイナスの気持ちの表現(SOSサイクル)」)がになう役割は、とても大きいのです。


●ママの喜びが自分の喜び
 認知に関する知識は、受験勉強のように、ただ黙々と学習していくものではありません。例えば、「あお」という色を覚えた子どもは、生活の様々な場面で青い色のものを見つけてきて、そのたびに得意げにお母さんに報告に来たりします。一人ぼっちの学習ではなく、「お母さんと喜びを共有する」というエネルギー源があるからこそ、学習意欲も進むのです。また、ことさら学習の時間を取らなくても、子ども自身が、新しい知識の獲得におもしろさを感じるので、日常の中で自然に知識が増えてくるのです。
 もっとも、発達が遅れた子の場合、自然獲得だけに頼るのではなく、意図的に教えていく必要も出てきます。しかし、それにしても、「お母さんと喜びを共有する」という親子関係があり、日常的な知識獲得の意欲が少しでも出てくれば、とても大きな伸びが出てくるのです。また、専門家による認知の個別指導を受ける場合でも、お母さん(あるいは先生)と喜びを共有しながらのほうが、ストレスが溜まりにくいのです。


●「教えてもらう」というSOSサイクル
 もともとSOSサイクルが育ってきていない子どもの場合は、分からないこと・できないことがあっても、あまり尋ねてきてくれない傾向があります。また、ちょっと修正を加えようとすると、たとえ優しく指摘したとしても、激しくかんしゃくを起こしたり・・・。ある意味、とてもがんばり屋さんなのですが、一人だけでがんばろうとすると、どうしてもムリが生じてしまうのです。その一方で試行錯誤は苦手だと、どうしても、認知的な知識が増えていきにくくなるのです。
  ところが、「これなあに?」「教えて!」とお母さんに尋ねられるようになると、それは、自力では知識の獲得が難しいときのSOSサイクルです。このサイクルができてくると、「そうじゃなくて、こうやるのよ」と、お母さんに修正されたりしても、「あ、そうか」と、比較的素直に修正に応じてくれるようになってくるはずです。
  赤ちゃんの時の、ママと一緒にいることがうれしい、かまってもらうのがうれしいということに端を発した「プラスの気持ちの表現」。それから、不安やストレスが溜まった時、泣いてママを呼ぶという「マイナスの気持ちの表現(SOSサイクル)」。この2つの親子関係が、「知りたい!」「教えて欲しい!」という意欲へと発展していくのです。たとえ小学生の子どもであっても、できる・できないという側面以上に、SOSサイクルを中心とした親子関係の面に注目していくと、接し方のコツが分かっているはずです。


●自己肯定感
  成長力にあふれた子どもは、ヘタくそな絵であっても、「どう!うまいでしょ!?」という感じで、得意げに見せに来たりします。でも、こんな妙な(?)自信に支えられて、くり返しお絵かきに没頭するうちに、だんだんうまくなってくるのです。
  つまり成長には、「上手にできるようになったから、その結果として自信をもつ」というよりも、「根拠のない(?)自信があるから、くり返し挑戦し続ける。そして、その結果として上手にできるようになる」という側面が大きいのです。「根拠のない自信」は、「自己肯定感」(ボクは、すごいんだゾ!という気持ち)と言うこともできるでしょう。こういった自己肯定感も、親子関係の延長上にあると言えます。
 遅れのある子の場合、「発達が遅れているから、自信がもてないでいるのだ。だから、どんどん教えて、できるようにしてやれば、自信が出てくるはずだ」というのは真実の半分です。あとの半分は、親子関係に由来する自己肯定感が重要で、そういった面を見逃したままでいると、エネルギー源は他の子の半分ということになってしまい、もったいないですね。つまり、お勉強とはまったく無縁な、親子の「じゃれあい遊び」のようなものの中で育ってくる自己肯定感も、認知力が育っていくための土台になってくるのです。


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