(6)発達障害の場合

 発達障害のお子さんの成育歴を調べてみると、生まれながらの繊細さ・心の緊張が強く、SOSサイクルにも強固なブレーキがかかっているというケースが、とても多いことが分かります。その結果として溜め込んでいると思われる慢性的な不安・緊張や、「ショックな体験」も、多くの子どもに見られます。
  発達の土台としての親子関係が、特に不可欠な時期は、2才半か3才ぐらいまでです。これぐらいの年令になると、お友だち関係とか、お母さん以外の人との関わりが、発達・成長のエネルギーとなる割合が高まってきて、親子関係の果たす役割がかなり減ってくるからです。この点、「自閉症に特有の症状(行動パターン)は、2才半から3才ぐらいに出そろう」という事実は、興味深いものがあります。他の子が「親子関係の発展的解消」を迎える時期に、自閉症の子は、SOSサイクルのブレーキが完成してしまうかのようです。
  また、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)など他の発達障害の場合は、気になる行動が出現するのは、自閉症よりも年齢が高くなってからのことが多いようです。これらのお子さんの場合、SOSサイクルに関するブレーキが、自閉症の場合に比べれば弱いので、蓄積された不安・緊張が、問題行動発現の臨界点に達するまでに、少し時間がかかったと考えることもできるのではないでしょうか。
 発達障害の多くは、「育て方のせいではなく、生まれつき、脳の中枢神経系の何らかの異常によるもの」とされています。しかし、だからといって、「発達障害があるから、親子関係は育たない」とあきらめる必要はないのです。発達障害のお子さんであっても、SOSサイクルを励ましていくことによって、親子関係がだんだんに育ちやすくなってくる可能性があるのです。


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