(1)ふたつの抱っこ法

 抱っこ法には、2つの種類があります。
  ひとつめは、「日常的な子育て法としての抱っこ法」。このHPや本(『ちょっと気になる子の育て方』)でお伝えしている、子どもの気持ちの受けとめ方は、こちらの抱っこ法です。子育ての原点であると共に、成長の土台となる親子関係を進めていく強力なエネルギー源になります。

  ところが、日常的な親子関係の中でいくら努力しても、気持ちのやりとりがうまくいかない場合があります。このコーナーや本を参考に、日常的な抱っこ法的関わりに取り組んで2ヵ月ぐらいしても、手ごたえが全くないような場合、うまくいかない原因としては、以下のようなことが考えられます。


▲「マイナス感情を親に訴える→受けとめてもらう→だんだんに落ち着く→不安・緊張が解消する」というSOSサイクルに対し、日常的な付き合いの範囲ではなかなかはずれないほどの強力なブレーキがかかっている。

▲「表情や態度による気持ちの表現」が大きく抑制されている場合、心の奥に抱え込んでいる気持ちと表に現れる様子・行動との間に、かなりのギャップがある。そのため、「本当に、この子が不安や緊張を抱えているのだろうか?」「そもそも、そんな繊細な気持ちなど、持ち合わせていないのではないか?」と、なかなかホンネの気持ちが見抜きにくい。その結果、親の方の共感性が開かれず、子どもの側も、気持ちをしまい込んだままになりやすい。

▲子どもが抱えてきた不安感情や緊張が大きいので、不安・緊張が解放される時、かなりの「感情爆発」になることが多い。その場合、慣れていないと、受け止めきれなくなってしまう。

▲SOSサイクルを促していく場合も、身辺自立を援助していく場合も、子どもの拒否・抵抗が強いケースでは、「日常的な援助者」としての親が、ボディコントロール(体の保持を併用する援助法)を身につける必要がある。

▲お母さんのストレス(親子関係が悪循環になっていることのイライラ、遅れに対する不安、なんとなくわが子がかわいく感じられないことのつらさ、など)が大きい場合が多い場合、自力で親子関係を再構築していこうとしても、なかなか気力が出なくなってしまう。

 このような場合は、もうひとつの抱っこ法である、「慰めの抱っこ」に取り組んでいくことによって、事態の打開がはかりやすくなります。
  「慰めの抱っこ」は、SOSサイクルに対するブレーキが外れやすい形で子どもを抱き、心の奥底にしまい込んでいる気持ちに思いをはせながら関わっていき、マイナス感情の表出を励ましていく方法です。この方法を続けていくと、「ママに甘えやすくなってくる」「かわいいベソをかきやすくなる」「表情の硬さが取れていき、表情に変化が出てくる」といった形で、親子関係が進み始めるのです。

  「慰めの抱っこ」には、以下のようなメリットがあります。


▲1才ぐらいから取り組むことができる。(年令が低いほど効果は早いです。上は、小学校3年生ぐらいまでが効果的。それより大きいお子さんの場合でも、少しずつの変化はあります。)

▲日常の親子関係が変わっていくような技法なので、ふだんの関わり方が楽になってくる。また、日常的・具体的な接し方のコツが分かってくる。

▲「育てにくい子ども」から「重度の障害児」まで、幅広く活用されている援助法なので、発達に遅れのある子でも、はっきりとした診断・判定を待たずに始められる。すなわち、健常児の場合は、親子関係が円滑になっていく効果、遅れがある子どもの場合は、親子関係を伸ばしていくなかで、発達の土台ができてくる効果、障害児の場合は、「2次障害」(ストレス症状による障害の悪化)の発生を防ぎ、気持ちが理解しやすくなってくる効果がある。

▲発達が遅れている子どもの場合、他の援助や療法(集団遊戯療法や個別認知指導など)と並行して取り組むことも可能。抱っこ法は発達の基礎となる土台を作っていく技法なので、かえって、他の療法に取り組む際の意欲作りにもなる。
 ただ、「慰めの抱っこ」は、日常的な子育ての範囲を超えたやりとりなので、独特の知識やコツが必要です。したがって、安易な気持ちで始めると、かえって不都合が出てくる場合があり、注意が必要です。


「なるほど」「参考になった」という方へ
いいね!・シェア、コメントお願いします。