◆いっしょに地獄へ・・・

知り合いの先生が担任する小学1年生のクラスで、Sくんが書いてくれた日記だそうです。

ゆうはんを たべているときに、
「ぼくは、おかあさんに、まいにち おこられてばかりいるから、
しんだら、じごくへいくんだね」
といいました。すると、おかあさんは、
「じゃあ、おかあさんも、いつも おこってばかりいるから、
きっと じごくへいくね」
といいました。だから、
「じごくで いっしょに あそべるね」
といったら、おかあさんが わらいました。

こんな話を聞くと、「地獄も、いいものだなあ」・・・なんて思ってしまいますね。

T君は小学校4年生。幼稚園や低学年のころは引っ込み思案が心配でしたが、このごろの心配は、お友達への乱暴。毎週のように「事件」を起こすので、お母さんはノイローゼ気味です。
今週も、担任の先生から電話がかかってきました。「おまえなんか、東京へ帰れ!」と叫んで、転校生の友達の鼻を本で叩き、鼻血を出させてしまったそうです。相手のお子さんは、「もう学校へ行きたくない・・・」と怯えてしまっているとか。夫婦で付き添って、家まで謝りに行かせ、事なきを得たのですが・・・。

友だちができないT君にとって、転校生の出現はチャンスでした。新しい環境に戸惑う転校生に親切をして、仲良くなったのです。でもやがて、学校に慣れてくるにつれて、転校生には新しい友だちもできます。そうなると、せっかくできかけた友だちが去っていくような気がして、T君は、裏切られたような気になったのです。
そういったT君の気持ちは、お母さんにもわかりました。でも、だからといって、手をあげてよい理由にはなりません。誉めたり叱ったり、いろいろ接し方の工夫をしてきたつもりですが、キレやすいわが子の性格は相変わらず・・・。

そんな折、中学1年生の子が、顔見知りの小学生を惨殺するという事件が起こりました。報道された少年の性格は、わが子とずいぶん共通点があります。「将来、この子が、人殺しをするようになったら・・・」と思うと、お母さんは、夜も眠れないほどのショックでした。
「いったいどうすれば・・・」と悩み抜いたお母さん。しばらくして、ふっと思ったのです。「精いっぱい子育てをして、それでも、わが子が刑務所に入ることになったら・・・この子が罪の償いをするまで、一緒につきあっていくしかない」 そう思った瞬間、涙があとからあとから止まらなくなりました。でも、涙が止まった後、なぜか、心の迷いは消えていたのです。

T君は、その後、薄皮をはがすように少しずつ落ち着いてきました。友だちづきあいも、高校生になった今、見違えるように上手になってきました。でも、人生、先のことは分かりません。しかしお母さんは、思うのです。「今を精いっぱい付き合うだけ。もしTが地獄に落ちるようなことがあったとしても、精いっぱい付き合っていくしかない」 そう考えると、かえって心が落ち着き、わが子との「今」を楽しめるのだそうです。


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